2026 HR Trend連載の第7回である。第6回が正社員中心のHRの限界を扱ったとすれば、今回は従業員個人の働き方がどのように変わっているのかを取り上げる。Polywork、副業、サイドプロジェクトは、もはや一部職種だけの例外的な現象ではない。
問題は「副業を認めるのか、禁止するのか」だけでは整理できない。従業員が複数の収入源と複数の役割を持つ時代には、報酬競争力、エンゲージメント、利益相反、情報セキュリティ、成果判断基準を同時に設計しなければならない。
副業は個人の逸脱ではなく、報酬のシグナルである
SHRM 2026 HR Trendsは「Employees Work Harder, Smarter… and Collect Two Pay Checks」という流れを提示している。この表現は、2026年のHRアジェンダにおいて、従業員がより高い生産性を求められる一方で追加の収入源を探す現象が同時に起きていることを示している。SHRMが同じトレンドページでAIの生産性効果とコスト・リスクをあわせて扱っていることも、この変化が個人の選択にとどまらず、組織運営の問題であることを示唆している。
従業員が副業をする理由は多様だ。生活費の圧迫、不確実な雇用環境、成長機会の不足、自分の専門性を市場で確かめたいという欲求が混ざり合っている。SHRM 2026 State of the Workplaceの要約が1,800人超のHR専門家と2,000人超の労働者データに基づき従業員の期待と組織課題を扱い、HR専門家の72%が労働者の雇用主への期待上昇を認識していると示した点をあわせて見ると、副業は報酬・成長・従業員経験のシグナルとして読むべきである。HRがこれをすべて問題行動としてだけ捉えれば、原因を見落とす。逆に何の基準もなく放置すれば、成果低下、利益相反、情報漏えいリスクが高まり得る。
Polywork時代の核心的な問いは、エンゲージメントと利益相反である
SHRM 2026 HR TrendsのWorkforce Fragmentationの流れは、組織外の仕事と組織内の仕事がより緩やかにつながる変化を示している。CEOの72%が2026年に独立契約者、ギグワーカー、フリーランサーの活用増加を予想しているという数値は、外部労働市場が組織運営の中へさらに深く入り込んでいることを示唆する。
この流れは正社員にも影響する。従業員は会社の中ではメンバーだが、会社の外ではフリーランサー、クリエイター、講師、アドバイザー、オンライン販売者であり得る。HRの核心的な問いは「副業があるか」ではなく、「その活動が本業の成果、会社の利害、顧客情報と衝突するか」である。
Total Rewardsは給与表ではなく、選択肢の設計になる
SHRM 2026 State of the Workplaceの要約は、1,800人超のHR専門家と2,000人超の労働者データに基づき、従業員の期待と組織課題を扱っている。SHRMの公開要約で示された、HR専門家の72%による労働者の期待上昇の認識は、報酬が賃金水準だけでは説明できないことを示している。
Polywork時代のTotal Rewardsは、基本給、成果給、福利厚生の束にとどまらない。柔軟な働き方、成長機会、財務ウェルビーイング、承認、キャリアの流動性、心理的安全性がともに機能する。従業員が会社の外で追加収入と機会を探すなら、HRは給与表だけでなく、従業員が組織の中で得る総価値を点検しなければならない。
AIが副業のハードルを下げるなら、規程も変わらなければならない
SHRMは、CEOの89%が2026年にAIが組織の価値創出と価値獲得の方法を再定義すると予想していると示している。AIは本業の生産性を高めると同時に、副業のハードルも下げる。コンテンツ制作、データ分析、文書作成、研修資料開発、オンライン販売運営は、以前より少ない時間とコストで始められる。
したがって、既存の兼業規程は再点検が必要だ。勤務時間中の外部活動、会社の機器やアカウントの使用、会社データの活用、競合他社または顧客企業との取引、会社の職務に類似した有償活動には、それぞれ異なる基準が必要である。AIを活用した成果物であっても、会社資料や顧客情報が混ざればリスクは大きくなる。
韓国企業は、禁止条項より先に判断基準を定めるべきだ
韓国企業が副業とPolyworkを扱う際、最も容易なアプローチは禁止条項を強化することだ。しかしSHRM 2026 HR Trendsが示す流れのように、従業員の外部活動と複数収入源は広がる方向に動いている。単純な禁止だけでは実際の行動を把握しにくく、かえって隠れたリスクを大きくする可能性がある。
HRは少なくとも四つの判断基準を定める必要がある。第一に、本業の成果と勤務時間を侵害するか。第二に、会社の営業秘密、個人情報、顧客情報とつながるか。第三に、競合他社・顧客企業・協力会社との利益相反があるか。第四に、会社の評判と職務倫理に影響するか。この基準は、就業規則、セキュリティポリシー、成果管理、管理職教育とあわせて運用されなければならない。
結局、Polyworkと副業の広がりは、従業員の忠誠心が弱まったという単純な話ではない。組織が従業員に提供する報酬と成長機会が、市場の他の選択肢と比較される時代が来たという意味である。HRは副業を隠れた問題としてだけ見るのではなく、報酬戦略とエンゲージメント戦略を見直すシグナルとして読むべきだ。
2026 HR Trend連載記事
Polywork編は、混合型人材の流れが従業員個人の報酬・エンゲージメント課題へ拡張される地点を扱う。
- ハブ記事: [2026 HR Trend ①] AIより先に変わるべきものはHRの運営方式である
- 前の記事: [2026 HR Trend ⑥] 正社員中心HRの限界と混合型人材運営
- 次の記事: [2026 HR Trend ⑧] バーンアウトと従業員経験、HRが書き直すべき心理的契約
- 全体一覧: [2026 HR Trend ①] AIより先に変わるべきものはHRの運営方式である
HRトレンドシリーズをあわせて読む
この記事は2026 HRトレンドシリーズの一編です。AI導入、責任線、成果管理、採用、アップスキリング、混合型人材、Polywork、従業員経験をつなげて読むと、HR運営モデルの変化の流れをより立体的に見ることができます。
- ① AIより先に変わるべきものはHRの運営方式である
- ② AI導入率より重要なもの、HRのAI責任線設計
- ③ 年次評価の終わり、AIコーチング時代の成果管理再設計
- ④ 採用自動化より先に変えるべきスキル基準
- ⑤ リアルタイム・アップスキリング、HRDは業務の流れを設計しなければならない
- ⑥ 正社員中心HRの限界と混合型人材運営
- ⑦ Polyworkと副業の広がり、報酬・エンゲージメント戦略の再設計 (現在の記事)
- ⑧ バーンアウトと従業員経験、HRが書き直すべき心理的契約
参考資料
この記事はSHRMの2026 HR Trendsと2026 State of the Workplaceの公開資料に基づいて作成した。本文では、SHRM 2026 HR Trendsの「Employees Work Harder, Smarter… and Collect Two Pay Checks」、Workforce Fragmentation、AI関連の流れをつなげ、SHRM 2026 State of the Workplace要約の1,800人超のHR専門家と2,000人超の労働者という調査範囲を、従業員期待とTotal Rewards解釈の根拠として用いた。副業、兼業、懲戒、利益相反の判断は国ごとの法制度と各企業の就業規則によって異なり得るため、本文は法律助言ではなくHR運営観点の点検基準として読むべきである。

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![[2026 HR Trend ③] 年次評価の終わり、AIコーチング時代のパフォーマンス管理の再設計](https://hr.widion.com/wp-content/uploads/2026/06/1397-distinct-coaching_conversation-1.png)


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